尾花沢市にある農業組合法人ドメーヌ楽酒楽粋では豪雪を利用して雪蔵をつくり、その雪氷熱を活用して地酒熟成をする取り組みをしています。雪氷熱利用とは冬の間に降った雪を貯蔵し、その冷熱を利用するものです。ドメーヌ落酒楽粋では尾花沢で生産された酒米を原料とした日本酒の醸成を、この雪蔵で行ってきました。
①種別 雪氷熱エネルギー
③取り組みの実施時期 毎年3月頃から6月頃まで(登録事業の初回実施 平成29年3月)
④実施場所 尾花沢市横町2丁目1-28
⑤設置者 農事組合法人ドメーヌ楽酒楽粋(所在地 尾花沢市)
⑥県民の参加方法 クラウドファンディングへの参加(支援総額1,216,000円)。雪蔵開き、試飲会への参加。
2018年7月1日に雪蔵開きが行われたので、やまエネで取材してきました。その様子をご紹介します。
花笠音頭にも唄われる雪をながむる尾花沢〜♪
冬には邪魔な雪、やっかい者の雪が酷暑の冷熱エネルギーに変身!
本格的な夏の到来を感じさせる晴天の日、尾花沢の農業法人ドメーヌ楽酒楽粋にて雪蔵開きが行われました。ドメーヌ式の雪氷熱雪蔵貯蔵倉は、蔵開の時は高さ約2.8mもありました。これでも溶けて小さくなった方で、作った時は高さ約10m(?)もあったのだとか。ドメーヌ式雪蔵は除雪機で雪を山積みにして、発泡スチロールの日よけ&雨よけの断熱ボードを置いて上からブルーシートをかぶせるだけの至ってシンプルなつくりになっています。
<ドメーヌ式雪蔵の外観>
例年、積雪は150cmほどですが、今年はなんと270cmを記録、3月の溶けにくいザラメ雪を使用したことで、雪蔵ひらきの日、30度を超える暑さにもかかわらず雪はしっかり残っていました。
<しっかり残った雪>
前置きはさておき、まずはセレモニーの開式です。
近藤代表より「雪蔵を開けて味わってみて、成果を確かめましょう。その前にいい汗かいて美味しいお酒を呑みましょう!」の言葉に、参加者の喉がなります。少しずつブルーシートをはがすと、氷の山が顔を出しました。去年の3倍ほどもある大きな雪蔵です。今年もドメーヌ楽酒楽粋の組合員が丹精こめて育てた山田錦を100%使った、純米大吟醸の生酒と火入の日本酒(720ml)が384本熟成されていました。特に生酒は今も酵素が活き働いています。雪中環境で、どの程度熟成されているのか楽しみです。また火入れしたお酒は氷温だと眠るように熟成しているともいわれます。まさにこの雪蔵はお酒にとって天国とも言える環境なんです。
さて7月の雪かきが始まりました。炎天下の中、みんな長靴にスコップを抱え汗だくで雪かきをする光景は、なんだか不思議です。雪山のそばに近寄るとひんやり気持ちいい風が吹いてきます。しかし実際は固い氷の山、なかなか強者で簡単に掘らせてはくれませんでした。総勢18名の大人が入れ替わり立ち替わりしながら雪山に突撃し、必死に掘ること約40分。ようやくコンテナの一部が顔を出しました。
<掘り続け、ようやく顔を出した酒貯蔵庫>
そもそもこの活動の始まりは「美味しい酒を吞むために山形県内では未だ誰も作れなかった、山田錦を作ってみない?」という一言から始まりました。今まで尾花沢では山田錦は作れなかったのです。作った当初は日本最北端の山田錦でした。最初は栽培方法が良くわからず、より質の良い米がつくれなかったのですが5年かけ、ようやく量と質ともに満足のいく米づくりができるようになりました。
ようやくお酒が蔵から出てきました。「わー!」という歓声と拍手の中、待ちに待った利き酒・テースティングです。「おいしい!」「とてもフルーティー」「ワインみたい!」と参加者の声、何より汗をかいて雪蔵から出したばかりのお酒を飲む贅沢は格別です!
今年の酒は山田錦の米の旨味が良く出て、さらに酸味が楽しめる味わいになっいて力強さがあります。との大場淳ソムリエのセリフに一同さらに感激していました。
<ダンボールが雪蔵から出てきたお酒の入った箱>
<みんなで試飲会の様子>
厳しい雪国の環境をポジティブにとらえエネルギーに換える。そして不可能を可能にした米づくりにかける農家のチャレンジ精神、消費者と生産者を繋ぎ、たくさんの笑顔を生み出すこの活動は大変素晴らしいと感じました。
その後は場所を大石田駅前にあるKOE no KURAに移動して試飲会が行われました。お酒を醸造した朝日川酒造蔵元の浅黄勘七さんからもあいさつがあり、「今回雪蔵へ入れたお酒は全部ドメーヌさんから預かった尾花沢の山田錦で作りました。雪蔵から出した今日が製造日になります。今年のIWC審査会では海外の方からおいしい!と賞賛をもらいました。蔵出し、ありがとうございました。たくさん呑んでください。」と感極まる言葉をいただきました。そしてドメーヌ農家からいただいた朝採りの新鮮野菜がたっぷり使われた、手作りの料理に「楽酒楽酔」の雪蔵熟成酒が進みます。最後に近藤会長より「雪に入っていた神秘も感じつついただいてください。」との挨拶に、やっかいものの雪の恵みに感謝する気持ちが湧いてきました。
乾杯は山形県産米を100%使った日本酒で!
今この瞬間の味わいに、みなさん笑顔で舌鼓を打っていました。
夏の街中に雪山がぽこぽこあちこちにあったらおもしろいですね。「豪雪地帯を悩ます雪」この雪を夏の冷蔵に活用する、ドメーヌ式雪蔵プロジェクトの夢は膨らみます。
<最後はみんなで乾杯!>
ドメーヌ式雪蔵設計図を教えていただきました。大枠は以下の形で、あとは日照状況など状況に合わせて工夫しながら変えていかれました。