- 第7回やまがた自然エネルギー学校
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市民のための新しい電力会社電気は選べるようになりました!
- 講師半澤 彰浩 / 生活クラブエナジー 代表取締役/生活クラブ神奈川 専務理事
- 講師 井上 喜男、冨樫昌樹 / 株式会社やまがた新電力 総務担当
- DATA2017年2月25日(土) / 東北芸術工科大学
未来をつくる電気の共同購入
生活クラブは何を目指して発足したか
生活クラブは現在33の組合があり、36万人の組合員からなる。供給高は846億円。出資金が395億円。生活クラブは人間が人間らしく生きる社会 (市民的自由)をつくるために1965年に世田谷で発足した。決して安心・安全な食品を共同購入するためにつくった組織ではない。最初は平和の活動や原水爆禁止の活動をやっていた。消費財の開発は人間が人間らしく生きるための基礎条件であり、売るための消費財ではなく、生活するための消費材という考えで取り組み始めた。電気もその一つであり、共同購入をやることで、今のエネルギー政策や電気の仕組みを自分たちのもとに引き寄せたい。
道半ばの電力小売自由化
生活クラブエナジーは全生活クラブが共同出資して作った子会社である。生活クラブが電気なんか売れない、停電するという声もあったが、実際には電気は系統連系しているから停電はしない。ただ、電気は色がついていないもので、電気自体はどんな発電所で発電しても同じもの。だから表示が大事で、ドイツでは表示が義務付けされているが、日本では義務付けされなかった。生活クラブの電気を使用している人に聞いてみると、なんとなく気分がいいとか、自分が払った電気代が自然エネの発電所に行くのが明白だから、という声が多い。 まだ発電と送電の分離が行われておらず、公平性や透明性が担保されていない状況がある。平等な条件が整のわないと、平等な競争にならない。
生活クラブの総合エネルギー政策
食料、エネルギー、ケア(たすけあい)は多国籍企業や儲からなければやめる企業にゆだねないで、自分たちで自治するのが方針。生活クラブの総合エネルギー政策として、つくる、使う、減らす、を3つの柱として活動している。「減らす」部分の省エネルギーは実は最大の発電ともいえる。そして、「使う」というところの役割のために生活クラブエナジーをつくった。
電気の共同購入
電気の供給ではなく共同購入。その主役は共同購入に参加する組合員であって供給側ではない。生活クラブエナジーは組合員(契約者)が自然エネルギーを中心とした電気を共同購入するための手段として位置づけている。 電気の契約のプランは一つだけで、通常の電力会社の価格と同じ。生活クラブの電気を契約しているのは2017年1月31日現在で約9000件。山形県は組合員が多い方だが、契約率はまだ15%程度。東北エリアでは、まだ契約になった件数が少なく、電源が余っている状態である。今後は4万世帯の契約を目標にしたい。
自然エネルギー発電所の開発
4つの生活クラブ(東京、神奈川、埼玉、千葉)で秋田県にかほ市に風車を立てた。この際に地域間連携の協定を結び、風をもらう代わりに、モノや人の交流に取り組むことにした。生活クラブのケチャップの原料として、生活クラブ風車の地主であり風車が立っている地元の営農組合に加工用トマトを栽培してもらったり、2016年産大豆で生活クラブの豆乳をつくる取組みや今後にむけて酒米をつくる話も出ている。風車をブランドにしたものの経済効果は3000万円以上になる見込みである。 生活クラブ関係が所有する自然エネルギー発電所だけでは全体の需要は賄えないし、将来自然エネルギー100%にしていくためにも新たな電源が必要。今後、市民発電所とも契約を広げていきたい。 山形県では、遊佐町に15MWのソーラーを建設予定。また、東根市にある山形県の白水川ダム(180kW)の電気を2016年11月から入札で購入している。
株式会社やまがた新電力の紹介
株式会社やまがた新電力の概要
3.11直後に策定された山形県エネルギー戦略がきっかけとなってつくられた会社である。資本金7000万円、内山形県の出資が3分の1。県レベルとしては全国初の新電力で、山形県ならびに県内企業を中心とした山形の資本で立ち上げた会社である。 取扱い電力量2300万kWhで、県内再エネ発電所を主電源とした再エネ比率が7割以上ある。東北電力の18%と比べても、再エネ比率の高い会社である。
電力の調達と供給
現在の電力の調達先は、太陽光 11事業者20発電所22,879kW、風力2事業者3発電所5,970kW、バイオマス1事業者1発電所1,600kWの合計30,449kWである。調達する電気の購入価格はFIT価格にプレミアム価格を上乗せしている。 電力は現在、県有施設77カ所に供給している。市町村施設への供給も進めており、3月1日からは庄内町へも供給開始する。料金は基本料金を東北電力と比べて1%下げている。 受給調整のイメージとしては、ベース電源がバイオマス発電、ミドル電源が風力と太陽光であり、足りなくなった時は東北電力からのバックアップ電源とバランシンググループから補給をしてもらう。
今後の事業展望と課題
需要先の拡大としてはまず業務用電力(高圧)を優先しており、低圧は継続的に検討中である。低圧を扱う場合はも、企業の低圧になるであろう。家庭へ供給するにはシステム開発とマンパワーが必要なので、少し先にはなるが、方針としては一般家庭にも供給したいと考えている。 4月以降は「改正FIT法」により、電力買取義務は送配電事業者となるなどFIT電気の引渡し方法が変わる為、収支に大きなインパクトとなる可能性もあり、注意深く進めて行く必要がある。
(文責・三浦秀一)