| 活動を知る |

レポート ポストFIT 〜使う再生可能エネルギーを街づくりに取り込むドイツ〜
やまがた自然エネルギー学校 特別講義
講師永井宏治 / ドイツ法人ASOBU共同代表
DATA2017年12月16日 / 天童市市民プラザ

日本では太陽光発電の買取価格も下がり、もはや太陽光発電は終わりだというような声も聞きます。そして、FIT(再生可能エネルギーの買取制度)終了後の世界がまだ描ききれないでいる状況かと思います。今回はドイツ在住のコンサルタント永井宏治氏から、FIT発祥の地ドイツの最新状況を聞くことができました。


ドイツではFITが終焉を迎え、再生可能エネルギーの電気を「売る」から「使う」に移行している。FITがなくなってきたとは言え、再エネは原子力や石油よりも安くなり、それに対して電力料金は上昇しているので、再エネの電気は売るよりも使う方が得になるようになったからである。
一般家庭でも売電から自家消費に完全にシフトしている。建物で使う電気以上の量を発電するプラスエネルギー住宅にして、自家消費だけでもやっていけるようにするのが中心的な動き。そのため、建物は太陽光パネルを屋根だけではなく、壁にも使っていかなければという議論が活発になっていて、いろんな大きさや色のパネルが販売されている。
また、太陽熱温水器も再評価されている。今までだと太陽光発電と、その発電した電気からヒートポンプで暖房給湯の熱をつくるのが一般的であったが、熱は太陽熱温水器の方が安いのではないかという意見が高まっている。特にエネルギーを貯めるという観点でいえば、電気を貯めるバッテリーよりもお湯を貯めるタンクの方が安い。
フランクフルトのプラスエネルギーマンションは、80世帯、8階建てで、壁面の太陽光発電の方が屋根より多く、暖房給湯は下水を使ったヒートポンプを熱源としている。このマンションには住民用の電気自動車もあるのだが、つくった住宅供給公社は電力会社も持っていて、住民への電気も売っている。こうした家賃収入だけでなく、電気からも収入を得るというモデルが増えている。

街単位での自家消費していく基本は地域熱供給。電気と熱を供給できるコジェネを使いたい。また、再エネの中心となる風力と太陽光はどちらも天候に左右されるのでバックアップに何を使うかを考えないといけない。そこで登場するのがバイオマスやバイオガスになる。


以上のような内容でしたが、再生可能エネルギーがどんどん増えて行くと、暮らしや街はこう変わるんだということが見えるようなお話でした。建物も変わり、電力会社も変わる。それに蓄電池だけでなく、熱にして貯めるという発想も必要。山形をドイツのような変えていかねば。

永井宏治(ながいこうじ)氏プロフィール
ドイツ法人ASOBU共同代表 建築・都市地域計画・環境コンサルタント
1981年大阪府生れ、2004年に渡独、現在はビーレフェルト在住。東北芸術工科大学、ドルトムント工科大学ディプロム過程卒業。都市計画局やエコ建築研究機関へ約10年勤務を経て独立、ドイツ法人設立。専門家や学生へのセミナー、自治体、企業へのコンサルティングやプランニングを行なっている。日経アーキテクチュア、環境ビジネス、建築技術、IBEC機関紙、その他メディアにドイツの都市と建築について寄稿。
https://www.ecspo.net/

主催 ソーラーワールド株式会社/やまがた自然エネルギーネットワーク
後援 山形県/天童市/天童温泉組合
本事業は山形県県民参加型再生可能エネルギー地域貢献支援事業として実施されました。

 

| その他の記事 |

  • お知らせ 2024.01.16
    ~熱と電気のエネルギーミックスを置賜から~

    エネルギーは電気だけじゃなくて、暖房とかお風呂の熱のエネルギーも必要。 これからは電気と熱のエネルギーミックスを考えるのが最新トレンド。バイオマスの熱 …

  • お知らせ 2024.01.13
    望む未来をみんなでつくる

    昨年末に開催された国連の気候変動会議では、世界のおよそ200か国が「化石燃料からの脱却」に合意しました。化石燃料をゼロにし、再生可能エネルギー100% …

  • お知らせ 2023.12.01
    デンマークの再生可能エネルギーと地域共生策

    デンマークの再生可能エネルギーと地域共生策   デンマークは世界で初めて化石燃料からの完全脱却を目標として掲げた国で、2030年までに1990年比でC …

  • お知らせ 2023.05.06
    やまエネミーティング2023を開催します

    電気代高騰、省エネ・再エネ、気候変動など、私たちの暮らしに大きな影響を及ぼすニュースが毎日のように聞こえてきます。激動の今、山形で、世界で、どんなこと …

  • やまがた自然エネルギー学校 2023.03.03
    申し込みを締め切りました:西目屋村の薪事業の取り組…

    *参加申し込みを締め切りました。たくさんのお申し込みありがとうございました。 西目屋村は白神山地のある、人口1200人の青森県の村です。 2017年に …

  • お知らせ 2023.01.03
    2023年頭のご挨拶

      2023年頭のご挨拶 やまがた自然エネルギーネットワーク代表 三浦秀一 やまがた自然エネルギーネットワークの活動は2011年の原発事故か …

  • やまがた自然エネルギー学校 2022.09.04
    イベント情報:ほしい未来は、自分たちでつくる〜家庭…

      人のせいにせず、自分に“矢印”を向けられる「当事者」を育てるには? “ほしい未来は自分たちの手でつくっていこう” と思える生徒を育てるた …

  • やまがた自然エネルギー学校 2022.08.25
    バイオマス懐疑論を分かりやすく解説してもらいます

      最近、「バイオマスは石炭よりも環境に悪い」という話が聞かれるようになりました。 薪やペレット、チップといったバイオマスエネルギーは山形で …