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村上敦講演レポート
~ドイツのエネルギーシフトから学ぶ~ 山形の地域経済を強化するための自然エネルギー
講師村上 敦 / 環境ジャーナリスト
DATA2017年1月29 日(日) / 東北芸術工科大学

山形県の経済はジリ貧

山形県の県内総生産は4兆円で過去推移してきた。しかし現在、慢性的に2500億円程の域内生産高が不足している。山形県は生産年齢人口当たりの生産性は上がっているが、山形県の経済が衰退しているのは生産年齢人口が急速に減り続けているから。実際には若い人の失業率は高く、若者に良い機会が与えられていない。ゆえに若者は首都圏に出ていくという理性的な判断をしている。

ドイツの再エネ電力は誰のもの?

ドイツの電力消費に対する再エネ発電の割合は2015年で32.6%だが、大事なのはそれを誰が投資をし、誰が所有者なのか。ドイツではごく一般的な市民が、再エネ発電の35%に投資している。それと、総人口比で1%もいない農家が11%も所有しているのが大きい。その一方、日本の再エネの所有者はほとんど東京の大資本、大企業。地域の景観や環境を考えない投資目的のメガソーラーや風力発電が増えてきて、住民の反対運動も起きている。

なぜドイツには醜いメガソーラーはないのか

ドイツには日本のようなメガソーラーの問題はほぼない。子どもたちが普通に自然風景の中に風車のある絵を書くように、風車はポジティブなものになっている。ドイツでは風力発電や太陽光発電には都市計画法上の規制を設け、議会で土地の用途変更の承認を得なければならないようにしている。つまり、地域住民の大多数の賛成がなければ建設は不可能。FIT制度も内容を変えてきて、2009年以降はメガソーラーは工業用地やアウトバーンなど幹線交通ルート沿いでないとできなくなった。2012年以降は10MW以上はFIT対象外。これは日本もすぐやるべき。

太陽、風、水を使う権利を持っているのは地域の人

風力発電は入札制になったが、6基、18MW以下の小さめのウインドパークで、地域の人が10人以上いる市民エネルギー組合であれば、入札時のアセス完了免除や預かり金が半額になるなど、条件を大幅に緩和して地域の人たちが風力発電に入りやすいようにしている。北ドイツやデンマークでは一定割合の地域住民が出資しないと許可されない。ドイツでは 太陽、風、水を使う権利を持っているのは地域の人と考えられている。つまり、東京や海外のお金を持ってきて山形に風力発電を作るということはできない仕組みだ。

正義は市民が戦って勝ち取らないといけないもの

ドイツでもFIT制度によっていろいろな問題が発生してきたが、その問題に対して声を上げる市民がいて、議員にも訴えながら、それが法律の改正へとつながっている。ドイツでは正義は市民が常に戦って勝ち取らないといけないものと考えられている。日本はというと、制度はお上が授けれてくれるものだから、国が何とかやってもらわないと困ると言う感覚だろうが、それでは永遠に制度は変わらない。山形でも問題があるなら、県に対して、自治体に対して、国に対して声を上げていかないといけない。

まずは省エネから

農村で最初から大規模な再エネをやるのはハードルが高いので、普通の地域では省エネから入る。例えば、新しい冷蔵庫に買い替えて電気代を節約するのと、買い替えないで古いのを使い続けてそのお金を銀行に預けるのと、どのように利回りが異なるのかキャンペーンで啓蒙する。日本ではほとんどない、外付けブラインドやトリプルガラスの窓がドイツではごく一般的に設置されているが、これによって工事費は高くなるが、それは地域の工務店や建具屋にお金が落ちる。同時に電気代が節約される。電気代をいくら払っても、地域には落ちない。

エネルギーはハードルの低いビジネス

地域経済にとって規模感があり、短期間で拡張する可能性がある分野は、エネルギーと資源しかない。地方創生のように、農産物を加工して高付加価値をつけて売り続けるのは容易ではない。エネルギーは、商品としては同じものを、常識的な価格で、地域の中にある需要で、省エネか再エネによって販売する、非常に単純なハードルの低いビジネスである。

山形県はみつぐ県民

山形県の発電設備の内、山形県民の所有は山形県企業局が保有する水力発電だけ。県民は常に県外にお金を払い続けてきた。同時にこれまで県内には1000MWほどしか発電設備がなかったが、すでに3700MWの設備がFIT認定を受けている。FIT認定を受けている発電所のほとんどは県外資本だと思われる。山形県民はほとんど発電設備に投資していない県民で、東京や宮城県に貢ぎ続けることを良しとする「みつぐ県民」となっている。

太陽光1に対して風力2

太陽光発電の導入量は日本もドイツとすでに変わらないレベルになりつつある。ところが風力発電はドイツが15%を賄っているのに対して、日本は1%にも達していない。ドイツでは太陽光1に対して風力2の発電量の割合が望ましいとされている。設備容量にしていうと、太陽光1に対して風力1。日本は太陽光9.5以上に対して、風力0.5以下。バランスが最悪。山形県も太陽光、バイオマス発電は増えたが、風力が低調。太陽光と風力が広域にちらばっていると、互いを埋め合って平準化され、変動対策としてバッテリーが必要というような話になりにくい。ドイツではFITもそれを誘導できるように価格設定してきた。

もう太陽光発電はいらない

山形県でFIT認定された設備がすべて発電すれば、消費している電力の24%が再エネに置き換わる計算になる。ドイツが33%なのでかなりのレベルである。認定を受けている太陽光発電の量が莫大すぎて、これらがもし実際にすべて設置されるならば、電力需要の小さな日中の時間帯では需要を上回る量を発電してしまう。残念ながら、もうメガソーラーは必要ない状況になってしまっているのである。

これからは自家消費

欧州でも太陽光発電では産業用の自家消費がメインになってきている。全量売電は日本でも制度的になくなっていく。工場や商業施設、公的機関などで消費する分を作るような自家消費モデルを考えてゆくべきだ。建物の電力消費パターンを見て、自家消費に最適な大きさや角度、方角を計算する。こうして、一軒一軒検討して設置していくようなきめの細かいサービスは地域の人しかできない。

蓄電池より電力系統の柔軟性

自家消費モデルはオフグリッドではない。変動する再生可能エネルギーを大量導入していくには電力系統の柔軟性を上昇させることが一番であり、電力系統に投資することが大切。それができていないのに、バッテリーを持ちだすのは無駄。電力系統の柔軟性は、すでに存在する対策がいっぱいある。系統に投資をしながら、再エネの発電予測システムを向上させ、既存の水力、揚水、火力などできめ細かく出力調整ができる新しい系統システムに変更してゆくのが筋。そういったもので対応できなくなったら熱分野への応用や、さらにはバッテリーが必要になるときもいつかやって来る。ただし順序としては電気自動車から。

ドイツの若者

日本全国見ても、私の講演で、これだけ若い人や女性がいる会場はめずらしい。ドイツでも若い人が特に積極的なわけではない。20年前はかなりの割合で若い人がいた。ドイツはエネルギーシフトがすでにメインストリームになったので、とりわけ若者など社会の関心は低下している。太陽光発電に投資している900万人もの市民も多くが60歳以上の人達。若い人はそもそもお金持っていないし、太陽光発電よりも車などを買うだろう。ドイツは特別な理想郷ではない。ただし、全体としては再エネにポジティブな意識を持っている。
(文責・三浦秀一)

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